クラス会

 この歳になると「同期会をやろう」という話が持ち上がるのが世の常のようでございます。生き残った連中の確認会みたいなものでございますな。昔の傷を持つもの同士は不思議とぶつからないという不自然さがございますが、あれはどうしてなのでしょうか。
 とはいえ、私にはそんな話も持ち上がりません。ま、小学校が三つ、中学が二つ、その後何の連絡もしないという訳で自業自得でございます。
 そう、あれはもう10年近く前になるでしょうか。突然高校の同級生だったAくんから封書が届きました。それがなんとも面妖な封筒で、めったやたらと小さな判子がぺたぺた押してあるのです。その上、中を読むと、やれ、文学界で様々な受賞をし、どこそこ大学からなんとか学位をもらい、今はどこそこ大学の学長だというのです。それで自分がクラス会幹事をするから、君も幹事を手伝いなさいというものです。
 あまりにも気持ち悪くて、そこに書いてある大学等の検索をしてみると全くのデマです。ハッと思い当たりました。ある意味「誇大妄想」なんです。病気です。電話がかかってきても居留守を使いました。彼は高校の同窓会名簿を入手しているわけです。何月何日どこそこで会を持つという手紙が来ました。それにも判子がベタベタと押してございます。もちろん出かけませんでした。すると私の留守中に「なんで来てくれなかったのか」という電話があったというのです。
 この話はそれっきりです。
 それ以来、高校のクラスではクラス会をやろうという話はすっかり消えてしまいました。